『森村泰昌 ー なにものかへのレクイエム』

豊田美術館で9月まで開催されている美術展に行ってきました

 

 

順路の入り口に森村自身が扮装した「ダリ」の'動く肖像'が飾り付けられていた

映画「ハリーポッター」のニュースペーパーに張り付いた動画を想像してください

液晶テレビの回路部分を取り除き液晶画面のみを壁面に掛けているような感じです

この展覧会が'ただごと'ではないことが予感でき 期待に胸がたかなり 緊張感がはしる

 

 

第一部 「戦場の頂上の芸術」では歴史を刻んできた男たちに森村が扮している

ピューリッアー賞の浅沼稲次郎暗殺事件 オズワルド射殺事件

これまたピューリッアー賞のサイゴン市街でのベトコン処刑の瞬間など

通信社から借り出してきたかのようなリアリティあふれる写真だが これらの主人公たちは森村の扮装だ

よく見るとベトコン処刑の背景はサイゴンではなく そごう大丸が立ち並ぶ御堂筋で森村の'遊び心'が充満している

 

 

「三島由紀夫」の市ヶ谷駐屯地での演説シーンはスクリーン上で森村扮した三島が芸術論を展開していた

「細江英公」の写真集「薔薇刑」のパロディー数点が展示されていましたよ

ロシアの革命家「レーニン」が赤の広場で労働者たちに演説するムービーでは

群衆が壇上のレーニン(森村)を見上げるが 数分も経ないで 飽きたように潮が引いていく

大阪の愛隣地区の住人とおぼしい人たちがエキストラなのが的を得ていて可笑しい

 

 

「ダリ」と同じく動く肖像

「チェ・ゲバラ」の鋭い眼光がきらめき「 アインシュタイン」の舌がうごく

 

 

「マハトマ.ガンジー」 モデルはもちろん森村泰昌

 

 

「昭和天皇」に扮装しているのが森村か それとも「マッカーサー元帥」もそうなのか

当時ははアメリカ大使館内で撮られているのだが この写真の背景はお茶問屋と思われる

 

 

ピューリッアー賞受賞の硫黄島の星条旗掲揚シーン

森村制作のムービーでは浜松の中田島砂丘がロケ場所か

 

 

第二部「全女優」

イングリッド・バーグマン カトリーヌ.ドヌーブ オードリー・ヘップバーン シルビア・クリステル

ライザ・ミネリ リタ・ヘイワース ジョディー・フォスター エリザベス・テイラー ジェーン・フォンダ

ブリジッド・バルドー グレタ・ガルボ ブリジッド・バルドー マレーネ・デートリッヒ マリリン・モンロー

日本の女優では

山口 百恵 岩下 志麻 藤 純子 原 節子 薬師丸 ひろこ 若尾 文子に扮している

作品は それぞれは彼女たちの映画作品からイメージされていて

イングリッド・バーグマンは『カサブランカ』ライザ・ミレリは『キャバレー』モンローは『七年目の浮気』の

名シーンから再現している

森村が放つ'毒気'は エマニエル夫人の股間の割れ目に ペニスを着けたモンローに鋭く表現されている

『若草物語』のシーンでは ひな段がある日本間の縁側に和装で座る「リズ」がまことちゃん人形を抱っこしているなど

'関西人森村'の解釈が一枚一枚に色濃く表出していて 観るものを惹き付ける

上の「若尾文子」は唯一の後ろ姿

オイオイ 下手な解説はせんでもいいだろう!
それより 森村泰昌はアーティストなのか写真家なのかどっちなんだい

はい  それがですね1990年にNHK教育テレビでですね放映された「近未来写真術」で森村の「名画シリーズ」について

「篠山紀信」が森村にインタビューしているんですよ

ですからその時は写真家じゃあなかったんですかね

まぁアーティストが写真を材料として表現したり 写真家がアート作品を発表したりすることもあるわけで

境界線を明確に引くことはナンセンスと言えるのかもしれませんがね

 

 

京都美大で油絵を学んだ森村が 名画の中に自分自身を入れる行為について'崖から飛び降りる覚悟'で始めたと

インタビューアーの篠山に対して 話していましたが この言葉からは芸術家としての意気込みが伝わってきます

やはり森村泰昌はアーティストなんですかね

おいおい 当たり前だろう
写真家が自ら絵画の中にいる主人公に扮しようなどとは思わないだろう

そうですよねぇ それに 天賦の容貌の持ち主でなければ 時間をかけて変装しても あそこまで他人にはなりきれません

森村と ほぼ同じ年代のアメリカの女流写真家「シンディー・シャーマン」も 

絵画制作から写真家に転向しセルフポートレートを展開しはじめたことで有名です

'カメラお宅'のカメラマンでは なかなか表現としての写真は始められませんね

激しく反省...........

オイオイ今さら反省してもとっくの昔に遅いだろう
それよりなんでペニスをつけたモンローとか女優の展示写真を撮ってこなかったんだい

はい それがですね 美術館の受付で聞いてみたんですよ 作品を撮影して良いかってね

豊田市美術館は常設展撮影OKって聞いていたもんでして 企画展も良いのかなぁ と

即座にNOの返事でした

NOと言われて引っ込んだんじゃあ男が廃ります

訪れた日が平日の午前中とはいえ 人っ子一人いないガランとした展示会場で監視のお姉さんたちが死角のない空間を作っていました

さすがに映写室には監視の目はなく思いっきり羽をのばして撮影できましたが

第二部「全女優」の広い会場には お姉さんはいるは ガードマンが両足を大きく広げ腕を後ろに組み不動の姿で立っていました

カメラからデータを抜き取られ ポイッと放り出さたんじゃぁ元も子も無くなってしまいます

これが いっぱい いっぱいでした

それにしても会場で写真を撮って なんでいけないんでしょう

フラッシュをパカパカ焚いて大きなシャッター音で撮れば 周りの迷惑になりますが

美術館という入れ物自体が権威 権力の塊のようなものなんですね

 

 

森村がヒットラーの姿を借りてメッセージを放っていました

「あなたは独裁者になっていませんか?」

ひょっとして森村泰昌が現代美術の独裁者 ?